何もしないということをするということ
あらゆる可能性を考えすぎるが故に結果何も出来ずに終わる。みなさんにもあると思います。今日はそんな話をひとつ。
先程、電車に乗ってましたらばね、ふと何か横切るものがありましてね、なにかなーと目を凝らして見てみたらそれはそれは小さな蜘蛛がちょろ〜とぶら下がっておりまして。
あらまかわいいですね〜春ですものね〜なんて思っておりましたらば、なにやら器用に横移動を始めたわけです。
高さ的にもつり革よりかなり下の方だったので、はて、どこに向かっておるのじゃ此奴はと思い先を見てみた所、どう考えても隣に立ってる女性が持ってるスマホの先端だったんですね。
人間誰しも、スマートフォンを凝視してる時に突然蜘蛛が現れたらギャース!って心の中で思うじゃないですか。
人によっては発狂して泡を吹くかもしれない。
その拍子にスマートフォンが床に落ち、画面が割れ、世界が終焉を迎える可能性だってある。
その事態だけは避けなければならない。
心優しい僕はそれを防ぐ為のあらゆる方法を考えました。
①さりげなくつり革を持つフリをして蜘蛛糸を断ち切る
一番自然かつスマートなやり方。美しい。超紳士。
ただこれにはひとつ問題点がある。断ち切った時点で世界と蜘蛛を繋ぐものは僕しかいなくなり、即ち蜘蛛は僕めがけて一直線に向かうことになる。恋の一方通行である。
それは困る。何故なら蜘蛛の糸というものはものすごく不快だからだ。
僕はすぐに考えを改めた。
②息を吹きかけて別の行動を促す
これは実際に試みました。何の意味もありませんでした。むしろ少し歩みを早めやがりました。
③直接言う
コミュ障の僕にはかなりハードルが高いが致し方あるまい。
事前に知っていれば落ち着いて対処もできるし、むしろ我が身に降りかかる火の粉は我がで処理するのが一番合理的だ。
ただここでまたひとつ問題点が。どんな言い方をすればいいのか。
小声で「蜘蛛来てますよ…(ボソ」とでも言えばいいのか。
もうそれチャック開いてますよぐらいのテンションやん鼻毛出てますよぐらいのテンションやん。
たぶん僕が言われたらハァ?ってなります。却下。
かと言って大声で叫ぶなど愚の骨頂。周りはパニックになり電車は止まり、スマートフォンは割れ、世界が終焉を迎えるかもしれない。
それだけは避けたい。
何よりハズい。いい大人が大声はマズイ。却下だ。
いや、待て。そもそもその女が蜘蛛女だった場合、あたしのかわいい子供達に何てこと言うんだい!って状況にもなりかねない。そうなったら終わりだ。間違いなく蜘蛛糸で身動きとれなくされてから生き血をチューチューと吸われるであろう。不快だ。
④何もしない
見守る。せめて最後は見届けてやる。業は背負おう。さあ行けスパイディ、無限の彼方へ!!
次の駅で降りて行きました。